- みなみ保育園では、毎年定期的に、保育士が自らの行う保育について、自己チェックを行っている。保育園での毎日の保育を振り返り、自分の行っている保育は、適正か、あるいは、不安が残るか、どのように改善していくかなどを話し合い、今後の保育の改善につなげていこうとする試みである。
- 今年度の自己チェックは、「保育者のための自己評価チェックリスト」を用いて行った。このチェックリストは、平成30年に公表された「保育所保育指針」を基にチェック事項が設定されており、これに回答することにより自らの保育をチェックしていく。
保育所保育を円滑かつ効果的に行っていくためには、保護者の協力が不可欠であることは、言うまでもない。保育士と保護者が連携し、子どもの発育の様子を共有し、日々の保育を行っていくことが重要である。
このような観点から、保育士が日々どのような考えで子どもの処遇に当たっているか、自己チェックにより理解を深めていただきたいと考える次第である
- 今回の自己チェックにおける各設問への回答を見ると、子どもの養護や幼児教育など、子どもの処遇に関する保育の内容についての設問に対しては、おおむね「できている(理解している)」と肯定的に回答している。また、集団保育の中で個々の子どもの要請に十分に対応できているか、自問する声もある。
更に、長引くコロナウイルス感染の中、その保育に与える影響が回答にも表れている。「会場集合型研修」から「職場オンライン研修」への変更と研修参加機会の減少、保護者送迎時の園内立ち入り制限や子供の状況についての情報交換、保育参観の中止、保育紹介機会の減少などが、指摘されている。
- これら設問への回答とともに、保育士たちは、自己チェック評価として、各自の課題や改善点などを特に気付の点を記載している。以下、取りまとめて紹介する(なお、評価表は、みなみ保育園事務室にて閲覧することができる。)。
- 園の基本姿勢について
園の保育理念や保育目標は明確にされ共有されているが、具体的に保育計画を立案するとき、常に意識されているとは限らない。ただ、意識されていなくても、保育計画に取り入れられていることも多く、保育を進めているときも反映されている。
- 保育所保育指針に示す保育内容
- (イ)各週の保育計画や各月の保育計画を立案するとき、(保育指針に記載される)保育計画や食育計画を特に意識せず、(保育指針は)”別物“として考えているようなところがあった。保育指針を含むすべての観点から子どもたちにとって良い保育を考えることが重要だと思った。
- (ロ)地域社会とのかかわりについては、今年は特にコロナウイルス感染症が拡大する中で、外部の者との接触が制限されたため交流事業もなかった。ただ、(子供たちの)散歩のときに地域の人と挨拶を交わす程度だったが、日を追うごとに話しかけてくることも多くなった。保育園の活動を身近に感じてもらう良い機会になったと思う。
- (ハ)子どもたちとの関りについて、保育状況全般については情報を共有し引継ぎを行っていたが、個々の子どもたちとの関りについての引き継ぎが十分であったかどうか不安が残る。担任が1年ごとに代わる場合が多く、情報の共有が1年区切になってしまうことが多い。子供との関りで十分ではなかったと思われる点が、次の年の担任にも引き継がれ、前の年の経験をさらに生かすようにしたら良いと思う。
保育園生活全体や就学を見据え、より統一的な計画の下で保育が行われるようになると、その空白が埋められるように思う。
- (ニ)(保育指針に記載された)各「ねらい」やその「内容」について、分っているつもりでいたが十分に理解しておらず、認識を新たにした部分もあった。また、毎日の保育を振り返ってみると、「ねらい」や「内容」が実施されていることも、少なからずあった。
- (ホ)小学校との引継ぎは、毎年文書(児童票)による申し送りは行われているが、合同での話し合いや意見交換は行われていない。学校側からの働きかけがないと保育園側からの働きかけでは、実現が難しいところもある。
- (ヘ)嘱託医について検討する必要があると思う。在園児の内科医による健康診断と歯科医による歯科検診が行われている一方で、個別の疾病や負傷の場合、保護者に連絡の上、かかりつけの医師の診察を受診し、嘱託医と連携することはあまりない。嘱託医に、何をどこまで求めることができるのか、検討すべきと思う。
- (ト)食育について、栄養士が中心となって行っているが、保育士も、食育に関する絵本の読み聞かせや話をしていくことも必要と感じた。
- (チ)不審者対応について、問題の洗い出しを行い、対応を話し合っていくことが必要と思う。防犯について、基本的な考え方を習得したい。
- (リ)子育て支援は、主に在園児の保護者に対して行うが、外部の者への対応は限られる。子育て支援を行うための施設は無く、人員(保育士)も足りず難しい。在園児の保護者に対する支援も、送迎時に話をしているが、時間が限られるなど、改善の余地があるように思う。
- (ヌ)今年は、コロナウイルスの感染症拡大のため、従来行われていた研修が開催されなかったが、これまでの実績を見れば、園としては職員研修は確保されていると思う。他方、各保育士がどのような研修を行いたいのか、研修に対する考え方が明確ではなく、オファーされた研修を受講する傾向にある。今後、自分に何が足りないか、どのような専門性を習得したいのか、よく考えて研修に望みたい。また、研修で習得したことを他の保育士と共有する機会も設けられるのが良いと思う。
- 今回の自己チェックを通じ、保育士が今後改善していきたいと考えている点は、以下のとおりである。
- (イ)幼児期の終わりまでに育ってほしい姿を十分に考慮して、日々の保育を進めたい。また、一人ひとりの子供の発達を把握し、保護者と連携しながら保育を行っていくようにしたい。
- (ロ)子どもが主体となって遊びを工夫できるような保育環境を作っていきたい。
- (ハ)子どもの個人差をより一層考慮して、丁寧な保育を行うようにしたい。
- (ニ)保護者との連絡帳によるやり取りを、密接にしたい。また、保育園での様子は、できるだけ正確に伝え、保護者が正しく状況を理解できるようにしたい。
- (ホ)毎日を楽しく、ゆとりをもって過ごせるよう、保育内容や「制作」を考えたい。様々な体験ができるようなあそびを用意したい。
- (ヘ)子どもたちの体調の変化には一層の注意を払い、保育環境を整理・整頓し清潔に保つため、掃除・除菌など、更に徹底したい。
- (ト)子どもたちの成長を助けるためにも、保育士自身も見聞を広め学びあい、子どもたちとのかかわりの中で、それを生かせるようにしていきたい。
<参 考>
自己チェックのための設問は、以下に掲げる分野の項目(365項目)について設定されているので、ご参考までに紹介する。
<総則 教育・保育の基本>
- 教育・保育の基本
- 教育・保育の配慮
- 教育課程・全体的な計画、指導計画作成と評価
- 特別支援教育・障害児保育
- 「育みたい3つの資質・能力」と「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」
- 子どもの発達
<保育の「ねらい」及び「内容」>
- 乳児保育に関わる「ねらい」及び内容
- 1歳以上3歳未満児の保育に関わるねらい及び内容
- 保育の実施に関わる配慮事項(乳児・1歳以上3歳未満)
- 3歳以上児の保育に関する「ねらい」及び「内容」
<健康及び安全>
- 健康支援
- 食育
- 環境・衛生管理、安全管理
- 災害への備え
<子育て支援>
- 園児の保護者に対する子育て支援
- 地域における子育て支援
<職員の資質向上>
- 園の保育理念、基本方針の理解
- 研修への参加、情報の収集
- 組織における役割
<以 上>